助けられてるよ、
感謝だよ。
ありがとう。
助っ人様に日給2万*じゃぁ申し訳ないってんでね、現場近くのメシ屋に連れて行くわけですよ。
ご近所の飲食店の客層、単価を視察したいってオレの魂胆もあるんだが。
「これは日給2万*とは別だ。食事手当だ。好きなものをやってくれ」
オレは偉そうに、
右の口端を吊り上げ、おしぼりで耳の穴を掃除しながらいうわけだよ。
先日、立ち寄った定食屋で、
商売とは?
について考えさせられたよ。
小汚い店の奥に歩を進め席を取った。
小汚いのはペンキの跳ね返りを受けたオレたちも同じ。
相応しく。
テーピーオーってやつだ。
この時点では店のチョイスに間違いは無い。
オレは茄子味噌。
ツレはサバの塩焼き。
厨房をカウンター席で囲む形の構造。
いってみりゃ、夫婦二人三脚の定食屋ってステージを見ながら食事って趣向。
こっからがドイヒー。
冷め切った夫婦仲の空気がこのカウンターを支配してるわけよ。
オレが彼らの息子で同じ食卓を囲んだらまずグレるね、居場所が無く公園のブランコでひとりで過ごすね。
特筆すべき事は料理のサウンドが聞こえない事。
フライパンが五徳にリズミカルに当たるサウンドとかね。
かわりに電子レンジの開閉音、モーター音と電子音。
料理が運ばれてきた。
茄子とピーマンの素揚げにスーパーで売ってる既製の味噌ダレがかかった料理もどきが運ばれてきた。
すると、
旦那が炊きあがりにムラのあるご飯を用意。
そして、みそ汁。
このジジイは見てるとみそ汁をよそう時に必ず茶碗の縁に具材をはみ出させるのよ。
必ず。どのお客さんのも。
そのはみ出し具材を指でインするわけ。
その際、何故か知らないけど腰入れてリズミカルにインするわけ。
必ず。どのお客さんのも。
あたかもその事で自身のノリを出すような。
ほら、リズミカルなピックさばきで自身のノリを出すたこ焼き屋さんとかいるでしょ。
あんなん。
この日のオレは十分にアンラッキーだった。
ジジイは新鮮そうには見えない生魚を掴んだ直後のその指でオレのみそ汁の具材をインしやがった。
オレの料理もどきが運ばれて7、8分。
ツレのサバの塩焼きはまだあがらず。
「わるいな、いま焼いてるから。」
ジジイがオレのツレに言う。
「焼いてるから」って言いながら指差したのは電子レンジ。
そうなの。
この店の焼き魚はレンチンなの、涙。
焼き魚のオーダーが入る度、ジジイは冷蔵庫から電子レンジに魚をスローイン。
レンチン。
とりだしガス台で魚に焼き目をつけて一丁上がり!
焼き魚じゃネェよ、苦。
本人は合理的!なんて得意になってる様な気がして腹立たしい。
ツレのサバは脂が乗ってたからかな。
着火して炎を上げながらサバが運ばれてきたからね。
燃え魚定食。
呆気にとられてたオレはババァがおしぼりでカウンターを叩いた音で我に返った。
飛び回る小バエを絞りの甘いおしぼりで打ち叩く。
「びちゃ」ってね。
オレの食事もどきのすぐ側でだ。
夕食にありつけた時
時刻は21時をまわろうとしていた。
腹ぺこだったハズだが、食欲は急速に減退。
「これは日給2万*とは別だ。食事手当だ。食ってくれ」
オレはツレにほぼ手つかずの食事を差し出した。
商売について考えさせられたね。
この店はこの体たらくでも客は入るのよ。
価値はなくても商売としては勝ち。
*2万:2万ドンです。作業員募集中。
VESPERA次回ライブ
6/14 新宿アンチノック
勝たなくてもいい。
独自性の価値のある楽曲をサーブしたい。